「もの造りの空中ブランコ」とは? 来るべきAI時代、人々はどう変化する?
鈴木:2020年っていうのはオリンピックがあったり、栃木県では国体があったり、色々な需要が起きてますけど。今日はどういうタイトルをいただけるのかと思ったら、「もの造りの空中ブランコ」って(笑)。なんですか、これは。空中ブランコって、あのサーカスのやつですよね。
木村:そうそう。こっちから人が来るわけですよ。それで、また反対側から人が来てね。
早いと握手できないし、遅くても握手できないわけですよ。技術ってそういうもので。例えば35年前にIoTのものを作ったとしてもあんまり売れないんですね。実際、作ったんですけど。コンピュータの技術もそうだし。例えば江戸時代にスマホを持っていって売れたかって言ったらですね、やっぱり売れないですよ、情報がないから。
鈴木:IoTってよく世の中で言われますけど、我々素人に分かりやすく言うとどういうことなんですか。
木村:インターネットっていうのは人が情報を調べたり、人に対してインターネットを使って向こうにメールを送ったり情報を引き出したりしてですね。今までは、人と人がやり取りしてたんですけど。例えばテレビがここにありました。このテレビをインターネットに繋げて、人間がテレビに「電源つけてね」ってお願いしたら、テレビが「はいはい」って答えるとかですね。冷蔵庫に「ビールあるかなー」って聞いたら、冷蔵庫が「はい、あるよ」って答えるとかですね。こういうモノに対してインターネットをくっつけてあげて、それを人間からテレビに意思を伝えるとか、テレビから人間に返事をするとか、そういうことが可能なんです。可能になってきたんです。今更でもないんですけど。
鈴木:それはどんどん進化しているわけですね。
木村:モノto人間、モノtoモノ とかもあるんですよ。あるスイッチが入ったら何かが起こるとか、センサーが反応したらインターネット通じて誰かに画像を送るとか。そこにAIが絡んでくると、人間の生活をもうちょっと便利にしてくれるような。そういう世界がだんだん出てきているよ、ということなんですね。
鈴木:もの同士が話し合って、最適な方法を選んだりして、それが進化していくと、データがたまってきて、それが判断までいっちゃうとAIなんですよね。
木村:そうですね。AIを使ってあげると、その辺りが人間の手助けになると。そういうところがミソかなと思うんですけど。
鈴木:そうなると人間の立ち位置は、今までと変わってくるんですかね。
木村:どうでもいいようなことはAIに任せておいて、創造的なことをやるとかですね。
鈴木:いや、それ、やってることが創造的なのか、本当はコンピュータに任せたほうがいいのかっていう判断がね。なかなか難しいですよね。作業なのかなと思ったら実はクリエイティブな仕事だったりして。
木村:そうそう(笑)。
鈴木:分からないから。やっぱり人間の閃きとか発想とかは依然として必要なんですよね。
木村:大きく2つに分かれちゃうかもしれないですね。例えば、自分で運動するのが嫌いな人は自転車とか車に乗るでしょ。そうすると、どんどん自分の筋力が衰えちゃうわけですよ。
鈴木:そういうことか。
木村:じゃあ今度はAI使って、面倒くさいから考える事はAIに全部頼んじゃうと、だんだん考えなくなっちゃうかもしれないですね。つまんないことはAIに考えさせておいて、もうちょっといいことを自分で考える、っていう習慣づけを自分でしないと。使い方間違っちゃうと、人間、退化しちゃうかもしれないですね。
鈴木:これからの教育システムのあり方っていうか。不便なんだけど人間的なものとかですね、アートの分野とか。
木村:そうそう。これからはどっちかって言うと、ビジネスとかそういうものを優先しなくちゃいけないんですけど、その辺はAIに任せておいて。もうちょっとカルチャー的なこととかをですね。考え方が変わってくる世の中だと思うんですよ。
鈴木:私も思うんですけど、これからはアートの時代っていうか。なんか感覚的に「いいな」っていうのって、AIでは、データベースでできるのかもしれないですけど、ちょっと違うので。そういうことできる人間が人間らしくて、っていう風になってくるのかなと。
木村:でも、最近AIでもね、絵を描いたりするんですよ。抽象画描いたりする。あんまり区別がなくなってくるかもしれないですね。
鈴木:社長は30年前からそんなことを考えて2001年宇宙の旅に影響されて……。
木村:そうですね。
鈴木:宇宙に行こうと思ったけど、空は飛んでるわけですね。
木村:そうですね。大学の時にグライダー部に入って、かなり色々乗ってたんですけど。そこの補助教官みたいなのをやってて。パイロット教育のためにシミュレータが欲しいと。
鈴木:教習所にあるようなやつですよね。
木村:そうそう。それで、昔はなかったんで、それを作ろうと思ったら、やっぱりコンピュータを作らないといけないんですね。
鈴木:コンピュータを作らないとシミュレータが作れないと。
木村:だから、最初はコンピュータを作ろうと思って。入った会社がバロースっていうコンピュータ会社だったんで。色んなものを買い漁ってですね。当時は秋葉原では、パソコンの商品っていうのはあまり売ってなかったんですよ。電子部品くらいしか売ってないんで。それで夏休みを返上して作り始めたんですけど。それがこの業界に入って、独立して会社を作ったきっかけみたいなものなんです。
鈴木:じゃあ、シミュレータにコンピュータの知識が必要で、教官として生徒を教えるのが動機だったにしても……。
木村:それのツールとしてコンピュータが欲しくて。そしたらそっちの方にハマっていっちゃったっていうだけの話で(笑)。
鈴木:奥深い世界でしょうからね。
木村:まあ、単純ですよね。欲しいから作ったってだけで。
鈴木:欲しいからって作れる人もなかなかいない(笑)。
木村:試行錯誤してね。
鈴木:でもそんなの教えてくれる人もあんまりいないですよね。
木村:情報がないんでね。インターネットもないし、マイクロコンピュータってのができたらしい、ぐらいの話ですから。
鈴木:マイコンの時代ですか。わかりました。あなたを元気にする一曲ということで、ゲストの方に一曲リクエストをいただいているんですよ。なんでこの曲かっていうのは後でお聞きするとして。ヨハン・シュトラウスっていうワルツの作曲家だったと思いますけど、『美しき青きドナウ』という曲を聴いてみます。
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